2008年06月19日

32:女王の策略

ラファエルが抜き放った二本一対の剣は銀製であるにもかかわらず、その刀身は仄かに黄金の輝きを纏っていた。
神の祝福を受けた銀製のデュアルブレード。
魔物に対する効果は絶大であり、世に存在する数ある武器の中でもおそらく最高峰に位置する物であるだろう。
構えたラファエルの両手にそれぞれ輝く剣を目にし、フェリジアがやや表情を険しくする。

「小癪な・・・厄介な物を持ち出してきたわね。」

その声色には不機嫌さが滲み出ており、フェリジアにも『鍵』となる武器の威力が伝わっていた。

「魔に対して最大級の威力を発揮する武器だ。・・・これを恐れるのは、魔としての本能か・・・?」

ラファエルは慎重にフェリジアの反応を窺う。
明らかにこの武器が、「今の」フェリジアに大して有効な攻撃手段であることが推測できる。
わずかに優位性を確信したラファエルだったが、フェリジアはしかし口元を綻ばせると不敵な笑みを見せた。

「たしかに厄介だわ・・・でもね。私がそれに対して何も手を打てないとでも思った?あのヒューマンの小娘が持っていた矢・・・。あれも邪魔だということがわかっているのよ。ならば対抗策のひとつも用意するでしょう。」

ティファが先日放ったオリハルコン製の矢。
確かにあれがラファエル達にとって、魔物に対する勝機を見出すきっかけとなった。
しかし、それは同時にフェリジアがその勝機に対する対抗策をも見出す結果となってしまったのだ。

「あの時、矢を使わせたのは失敗だったわね。」

冷たい笑みを浮かべ、フェリジアが目を細めた。
その時、森が動いたように感じた。



ティファとアルバート、そして合流したセロは変わらず警戒態勢を保ったまま、迎撃の戦闘を続けていた。
彼らを包囲する魔物は、なぜか一斉に襲い来ることはなく、たまに数体がのそのそと近づいてくるだけであった。
これまで幸運なことに体力を消耗することなく、また大した打撃を受けることもなく徐々にその数を減らしていった。
が、包囲する魔物の数は目に見えて減ることはなく、数十体の魔物がまるで彼らを足止めするのを目的としているかのように取り囲んでいた。

「くそ・・・!なんなんだこいつら!囲むだけ囲んで、ただ見てるだけかよ!いっそこっちから切り込んでやろうか・・・!」

膠着状態を強いられている現状に嫌気がさしたのか、アルバートが舌打ちをして唸る。

「お、落ち着いてよ!あんな数の中に切り込んだらそれこそあっという間に囲まれちゃうよ。」

いらついているアルバートを宥めながらティファが肩越しに嗜める。
一瞬も緊張を解くことができない状態が続くだけで、体力的にも精神的にも負荷がかかるのは確かだ。
二人はその極限状態の中ですでに1時間以上もよく耐えているといえる。
そしてそのことは二人の額から流れる汗が物語っている。

「・・・しかし妙だ。この魔物どもには以前のような殺意や敵意がほとんど感じられない。」

二人の側で同じように警戒態勢を維持しているセロが、ふと口にした。
二人がセロに視線をやる。
セロはその視線を受け、ぐるりと周囲を囲む魔物を一瞥した。

「・・・こいつらは我々を襲うためにいるのではないのかもしれない。何か違う目的がある・・・しかし意思が感じられない。」

ティファとアルバートは、セロの言葉を聴いて互いに顔を見合す。
なるほど、確かに薄々とは感づいていたことだ。
変わらず自分達を包囲する魔物の群れ。
そしてたまに足止めをするかのようにのろのろと遅いかかってくる。
まるでラファエルとフェリジアとの戦いの邪魔となる物達をこの場に縫いとめるためのように。
では何故一斉に襲いかかってくることがないのか?
ここでティファがある推測を口にする。

「あのフェリジアって人、この魔物を操れるような力を見せたよね・・・?」

アルバートとセロが先日のことを思い返し、おそらくそうだろう、と肯定する。

「今ここにいる魔物もそうかもしれないってことだよね?じゃあ襲ってこないのはフェリジアの意思?もし私達を殺すためだけならすぐにでも全部の魔物に襲わせるはず。それをしないのは・・・」

ティファの言葉は徐々に呟くように小さくなっていく。
自分の考えをまとめているようだ。

「混戦になれば、ほぼ間違いなく私達は負ける。でも、少なからず魔物達もいくらかは数を減らすことができる。少しくらいなら対処できるけど、フェリジアは私がオリハルコンの矢を持っていることを知っている。」

ティファの思考がぐるぐると渦をまく。
やや俯き、眉間に皺をよせてその思考を徐々にひとつの答えへと導く。

「その矢を警戒してるってのか?」

アルバートが尋ねる。
しかしティファは少し考えたあと、小さく否定する。

「それだったら、むしろ多数の魔物を仕向けて矢を消費させようとすると思う。・・・じゃあ何故・・・?」

そしてティファの推測がひとつの答えに辿り着く。

「魔物の数を・・・減らさないため・・・?」

アルバートとセロが、ティファの導き出した意外な推測に驚愕する。
しかし、確かにそう思うならば納得のいくところもある。
ラファエルとフェリジアとの戦いの邪魔となる存在を隔離し、足止めするためにそれらを包囲する。
そしてあわよくば殲滅するために数体の魔物を仕向ける。
しかし魔物の全勢力をもって殲滅しようとするならば、オリハルコン製の矢とアルバートの剣技の前に少なからずその数は減らされる。
それを避けるために、この現状を維持しているのではないか。
その推測に至ったとき、新たな疑問が浮かぶ。

なんのために?

三者が同様にその疑問を抱いたとき、包囲の輪が動いた。

「魔物どもが動くぞ・・・。」

いち早く察知したのはセロだった。
その言葉に、二人が包囲する魔物を見た。
三者を包囲する魔物達は、ほぼ一斉に緩慢な動きで移動を開始する。
しかしそれは襲いかかるための動きではなく、むしろ彼らから離れていっているように見える。
その行き先は・・・・・・・・・・・・・・

やや離れた場所で繰り広げられている死闘の場所。
ラファエルとフェリジアのいるところであった。

厳密には、魔物の女王であるフェリジアの元へと、魔物達が集結していた。
posted by ラストエフ at 13:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後ラファエロとフィリジアのいるところだおおおおおお;;
Posted by るぅ at 2008年06月19日 20:54
ラファエル(*ノノ)キャ
エロはエフたんだった(*ノノ)キャ
Posted by るぅ at 2008年06月19日 20:54
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