2008年06月26日

33:魔性の剣

アルバートとティファ、そしてセロを取り囲んでいた魔物達がその包囲の輪を徐々に崩し、変わらず緩慢な動きで一斉に行動を開始した。
数体の魔物が近付いてきたが、三者は連携してその数体を悉く撃退する。
しかしそれ以外の大多数は三者には目もくれず、ある方向へと向かっていった。
その行き先は、魔物達の女王であるフェリジアの元。

「おいおい、何が始まったんだ・・・!?」

突然の出来事に、抱いた疑問をそのまま口にするアルバート。
しかしそれに答えられる者はいない。
魔物達の向かう先に視線を移し、セロが確認するように呟く。

「・・・マスター達のところへ向かっているようだな・・・」

セロの言葉に、アルバートとティファも同じ推測をしていたことを確認するかのように視線を交わす。

「私たちのことなんか眼中にないみたいね。やっぱり、フェリジアはこの魔物達を何かのために待機させていた・・・ってことかな・・・?」

自分達には目もくれずに移動を続ける魔物を見て、確認するようにティファが言葉を漏らす。
三者はそれぞれ視線を交わし、そしてそれぞれが言いようのない不安を抱いていることがわかる。
ややあって、魔物達のほとんどが三者に背中を向けるほどになった頃、アルバートが告げる。

「ラファエルの所へ行こう・・・!」




どこからともなく、フェリジアの側にぞろぞろと魔物達が集結してくる。
その数はどんどん増えていく。
二人の周囲から、フェリジアの背後から、そしてラファエルの仲間達を包囲していた多数の群れまでもが、一様にフェリジアの周囲に集まってきていた。
ラファエルの側をすり抜けるようにフェリジアの元へ向かう魔物もいた。
ラファエルには、それらが自分に対する敵意を持っていない気配を察知していたが、おもむろにその内の一体を無造作に切り捨てる。
その魔物は2〜3歩そのまま進むと、がくりと膝を着きそのまま地面に伏した。
しかし他の魔物はやはりラファエルの姿すら認識していないかのように、ただ盲目的に女王の元へと歩くだけだった。
やがて森にいたほとんどの魔物達なのであろう、多数の配下を従えた女王が不敵な笑みを浮かべた。

「ラファエル・・・その武器が貴方の奥の手なんでしょう?だから私も、その武器に対抗するための奥の手を見せてあげるわ。」

冷酷な笑みを浮かべる女王の左右から一体ずつの魔物が近づき、女王の前へと歩み出る。
女王の前に立ちはだかるかのように歩みでた魔物は、それでも意思などは感じ取れず、ラファエルに対する殺意や敵意も感じられない。
まるで抜け殻のように。
ラファエルは状況が把握できず、攻め込むことを躊躇する。
この武器ならば魔物をほぼ一撃で葬り去ることも可能である。
しかし、ラファエルはあくまでも慎重に、冷静に現在起ころうとしている事を把握するために警戒態勢を維持した。
フェリジアの前、左右に立つ意思のない魔物。
フェリジアはさらに口角を持ち上げ、左右の手をそれぞれ左右に立つ魔物の背中に突き刺した。

「・・・!なっ・・・!?」

予想外のフェリジアの行動に、少なからず驚愕するラファエル。
女王に背中を貫かれた魔物は、それでも抵抗することはなく、何度か大きく痙攣し身体を仰け反らせる。
配下の事など眼中にないかのごとく、変わらず凍り付くような笑みを浮かべながらラファエルを見つめるフェリジア。
やがて魔物はその動きを止めると、更なる変化が始まる。
その身体が徐々に崩れだした。
厳密には、溶けだしたかのように形を崩していく。
そして本来の姿である、不定形な粘体へと変貌した。
しかし、そこで変化は治まらなかった。
フェリジアの両手にまとわりつく粘体は、そこから更に形を変化させていく。
やがてそれは巨大で、いびつで、あまりにも大雑把な剣へとその姿を安定させた。
フェリジアは、上位種である姿には似つかわしくない禍々しい剣をその両手に作り出し、目を細めて更に冷酷な笑みを浮かべた。

「ふふ・・・どう?これなら、その武器の効果を無効にできるでしょう?この子達が私の役に立ってくれるのよ。」

両手が巨大な剣と融合したかのようなフェリジアは、左右にぶら下げた大雑把な剣を、重さを感じさせない動作で確かめるように振った。

「・・・そのためにこいつらを残していたのか・・・!」

ラファエルは、仲間達を取り囲んでいた魔物が彼らに襲いかかっている数が異様なほどに少なく、故意的にその数を減らさないようにしていたことに気付いていた。
そしてその理由はたった今目の前に公開されている。

「さすがに目ざといわね。その通りよ。私はこの子達を操ることができる。別に仲間だとか思ったことなんてないんだけど、利用できるものは利用するわ。・・・貴方を手に入れるためならね・・・。」

す、っと目を細め、微笑を薄めたフェリジアが一歩踏み出す。

「・・・時間も迫ってきているわ。そろそろ終わりにしましょうか。」

いつしか空は朱に染まりつつある。
太陽がその姿を地平に隠すまで、もう時間は残っていないだろう。

互いに奥の手を持ち出し、そのことがこの死闘の決着が近いことを如実に物語っている。
強大な退魔の力を宿すラファエルの2剣。
それに対抗するためのフェリジアの、魔物そのものを錬成した巨大な剣。
対峙する二人は徐々にその距離を詰める。

空がその色を変えつつある森。
アルバート、ティファ、セロの三者が二人の姿が視認できる場所まで駆けつけたとき、正にその二人がぶつからんとしていたところであった。
posted by ラストエフ at 04:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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