2008年07月16日

35:激闘の末

ラファエルの振るう剣がフェリジアの大剣とぶつかり合う。
その都度、フェリジアの剣は削れ、欠け、辺りに飛び散る。
しかしそれはフェリジア自身になんらダメージはなく、武器としての価値がなくなれば周囲に待機する魔物を新たな武器として調達するだけで済む。
アルバート、ティファそしてセロの三者は、それを打破し、ラファエルの剣がフェリジアに届くよう最大の支援をしている。
すなわち、フェリジアが武器として準備した魔物達の数を減らすことである。
が、それがどれほどの効果をもたらすかは分からない。
それでも、何もしないよりも、いや、何もできないからこそ、自分達にできる最大限の行動でラファエルを支援することしかできなかったのだ。

当然フェリジアは自分の状況における弱点を承知している。
自分が勝利するための鍵は、この眷属の魔物達の存在だ。
これがそのまま自分を守る盾であり、またラファエルの武器に対抗するための最大の武器でもある。
邪魔者がそれを妨害してくることも予測している。
そのための手もすでに打ってある。
今この場で警戒すべきは、ラファエルの持つ退魔の剣と、ヒューマンの娘が所有するオリハルコン製の矢だ。
それらを使わせなければ、勝機は見えてくる。
勝機ではない。
絶対なる勝利だ。
私は、負けない。
生きるために。
永遠の命と力を得るために。
もう一つの光を手に入れる。
ラファエルの持つ魂の光を・・・!
もう手に届く。
目の前にある。
眩しく輝く最後の光が。
嬉しい。
嬉しい・・・。
もうすぐ私は完全体となれる。
もっとこうやってラファエルと語り合いたいけど。
もう時間がない。
だから。

終わりにしましょう。



ラファエルの息が上がる。
すでに長時間の戦闘が続いているにもかかわらず、フェリジアの表情には疲労の色は微塵も伺えない。
対してラファエルの体力がすでに限界であることは明白だ。
動きは鈍り、反撃する剣も少なくなり、ただただ襲い来る凶剣を弾き、防御することが精一杯だった。
しかしその闘志は消えることなく、徐々に押されてはいるもののフェリジアの剣を消耗させ、貴重な一瞬の隙に反撃にも転じている。
幾度目かの攻防が途切れ、フェリジアが大きく飛び退る。
そしてまた同じように配下である魔物をなんの感情もなく武器として生成する。
そして変わらず微かな微笑みを浮かべてラファエルに語りかけた。

「よく頑張るわね・・・。でももう限界でしょう?そろそろ、ラクにしてあげる・・・。」

フェリジアの言葉に応えるかのように、両手の大剣がさらに禍々しい形状に変化していく。
鋭さが増し、歪だった刃が明らかな輝きを以て鈍い光を放った。
ラファエルに言葉はない。
答えるほどの体力すら消耗していた。
肩を大きく上下させ、荒い呼吸を繰り返していた。
しかし、それでも眼光は鋭さを保ったままフェリジアを射抜く。
その様子を楽しげに眺めていたフェリジアの、雰囲気が、纏う気が変わる。
微笑みが薄まり、目が細められ、剣がゆらりと左右に広げられる。



来る

ラファエルの意識が急速に一点に集中する。
時間が収束する。
全ての音が、景色が、ラファエルの意識から排除される。
目に映るのは、ただフェリジアの姿のみ。
次の交錯で決まる。
いや、決める。
全ての力をこの一瞬に賭ける。
そしてこの剣を、届かせてみせる。

一瞬だった。
ラファエルが荒れる息を無理矢理抑え込み、ひとつ呼吸をする時には、フェリジアの疾走が始まっていた。
低く地を滑るように距離を詰めたフェリジアは、右手の大剣を大きく振り下ろした。
ラファエルの瞳孔が収縮する。
最大にまで集中したラファエルは、限界を超えた自身の身体が、その限界をも超えたことを実感する間もない。
目にも止まらぬ速さで襲い来る凶刃に対し、ラファエルは同じく右の逆手に持った剣で迎え撃つ。
身体を相手の刃の外に避けながら剣を繰り出す。
最高速で迎え撃ったラファエルの剣は、フェリジアの剣を中ほどで両断する。
しかし次の瞬間にはすでにフェリジアの左手の剣による斬撃が襲いかかっている。
ラファエルはその右手を戻すと同時に左順手の剣でそれをも打ち落とす。
そして最後に交差された双剣によって最大の一撃を放つ。

はずだった。

ラファエルの迎撃は、フェリジアの最初の一撃を見事に迎え撃った。
そして第二撃を迎え撃つ行動に出ようとした瞬間、その動きが止められていた。
両断したはずのフェリジアの剣は、即座にその姿を形のない粘体へと変化させ、ラファエルが振り抜いた右手にまとわりつきその動きを拘束した。
そして直後に繰り出されたフェリジアの左手の剣は、同じく剣の姿から粘体へと変化し、それでも反撃に転じようとしたラファエルの左手を拘束する。
ラファエルの両手を拘束したそれは、徐々に双剣を飲み込み完全にその威力を無効化した。
ラファエルの表情に驚愕の色が浮かぶ前に、フェリジアは勢いを殺さぬままにラファエルの腹に蹴りを放つ。
その衝撃で後方へと飛ばされるラファエル。
同時にフェリジアの手から、粘体と化した拘束具がずるりと抜ける。
ラファエルは両手を剣ごと粘体に飲み込まれたまま、背中を大木に打ち付け、ずるずるとその場に崩れ落ちる。

歪む表情で顔を上げると、すぐ目の前にフェリジアの顔があった。
そこに浮かぶ表情は、歓喜。
恍惚とした歓喜の表情。
そして、腹部に突き刺さる熱い感覚。
腹部に感じる灼けるような熱が、滴り落ちる自身の血液によるものであることが理解できるまで、数秒かかった。
息がかかりそうなほどに近づき、ラファエルの前に膝をついたフェリジアがそこにはいた。
その両手は先程まであった巨大な剣ではなく、生身の美しく華奢な手だった。

左手でラファエルの頬をそっと撫でていた。
そして右手は。

五指が、ラファエルの腹部に深々と突き刺さっていた。



posted by ラストエフ at 02:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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