2008年12月21日

43:二人の絆

全身に風を纏い、フェリジアとの距離を少しずつ縮めるラファエル。
力を持つ風がラファエルの髪を微かに揺らす。
ラファエルに気圧されるように、一歩、また一歩と後ずさるフェリジア。
周囲にいた魔物達は女王の束縛から解放され、糸が切れた人形のようにふらふらと辺りに散っていった。
すでにフェリジアを守る風の鎧も、魔物の盾も、そこには存在していなかった。

先にセロによって戦場へと届けられた一つ目の鍵である『銀の双剣』
そして、魔物の力が増幅するきっかけとなる『満月』
ふたつの鍵が揃い、当初ラファエルやティファ達が思い描いていたものとは違う課程ではあるものの、結果は予定していたものよりも遙かに優位となった。
それは奇跡なのか、それとも運命なのか。
死の淵からラファエルは蘇り、絶望の底から形勢は逆転した。



対立する二人を見守る三者。
そんな中で、落ち着きを取り戻しつつあるティファはほぼ無意識に状況を分析していた。
当初の予定は、夜が更ける前、即ち満月が昇る前に一つ目の鍵をセロに届けてもらうこと。
これは予想よりも早く最終目標であるフェリジアとの遭遇があったものの、セロの活躍により見事達成される。
そして、二つ目の鍵である満月が昇ったとき、一つ目の鍵である退魔の剣でフェリジアの中の魔物のみを倒す。
ここで誤差があった。
そもそも、何故満月を待つ必要があったのか。
満月が昇れば魔物の力が増幅し、フェリジアの力もより凶悪なものになると予想されたはずである。
それこそ、ラファエル達が見出したフェリジアを救う希望でもあったのだ。
魔物の力が増大した時、退魔の剣でフェリジアの中に住まう魔物だけを斬る。
成功の見込みがあるとは思えない、無謀な賭け。
満月が昇った瞬間、フェリジアに何らかの変化があると予想し、その前にこちらの準備を万端に整え、変化のある一瞬に賭けるしかなかった。
その狙いは、大方正しかったとは言えるだろう。
それはフェリジア自身の言葉からも読み取ることができる。

『私はまだ未完成。とても不安定な状態なの。この肉体の中で、ふたつの力がせめぎあっている。満月が昇ると・・・その力の拮抗が崩れる。』

同化した上位種と魔物の力は、満月の魔力によってその拮抗を失う。
作戦の読みは正しかったのだ。
そしてそれを避けるために、フェリジアはラファエルの力を取り込もうとしていた。

しかし、現実はその全てが思惑通りに行くほど甘くはなかった。
圧倒的な力でラファエルを制し、多数の魔物によって邪魔者である三者を排除し、更に鍵である退魔の剣すらも封じられる。
ラファエル達が託した一筋の希望は、瞬く間に絶望へと一変した。
そしてフェリジアの前に力尽きるラファエル。
望んでいたラファエルの力をも取り込み、フェリジアは新たに風を操る能力を得て、神に等しい力を手に入れた。
絶望の底に陥った4人に差し込んだのは、一筋の光。
ここで、二つ目の鍵である満月が現れ、奇跡が起こり、形勢が逆転した。

それは何故か。

あの時、ラファエルの腹部にはフェリジアの指が深々と突き刺さっていた。
そして、先程ラファエルが言った言葉。

『フェリジアがおれに力を貸してくれている。』

それはもしや、満月の力で増幅した魔物の力がフェリジアの身体を埋め尽くし、本来のフェリジアの魂と力が押し出され、結果ラファエルへと流れ込んだと考えられないだろうか。
それならば、上位種の力である風を、フェリジアが失い、現在ラファエルが扱えるようになったのも頷ける。

これを、誰が予想できたであろうか。
正に、奇跡。
種族を超えた二人の絆がもたらした奇跡としか言えない。
絶望から希望へ、そして希望から絶望へ。
運命の歯車は、ラファエルとフェリジアの魂の、本来あるべき姿へ向けて回ったのかもしれない。
その運命はラファエルにとって残酷で、耐え難いものであるかもしれない。
しかしフェリジアの魂を救うために、彼は今、この戦いに終止符を打とうとしている。

真実はわからない。
あくまでも憶測の域を超えない。
でも・・・

ティファはこの奇跡が必然だった、と信じている。
そして、魂という絆を取り戻したラファエルの勝利を、信じた。

この戦いの結末を、一瞬たりとも逃してはならない。
それはティファだけではなく、アルバートとセロも同じ思いだった。
三者は静かに、しかし確信を持ってラファエルの最後の戦いを見守った。



激しい戦いを繰り広げてきた、人外の二人。
その結末は、一瞬の交錯で決着し、その場にいた全員の心に刻まれ、忘れることのできない悲しいものだった。



posted by ラストエフ at 04:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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