誰もが悲哀の表情で、声を発することもなくその場に佇んでいた。
やがて店のドアが開き、新たな客が来店すると、ティファの隣でカウンターに寄りかかって話に耳を傾けていた女性、ウェイトレスのリオーネがその客を案内するためにその場を去った。
リオーネの、客を迎える声と談笑が聞こえてくる。
続いて女主人であるエルガが厨房へと戻っていった。
アルバートはいささか温くなってしまった麦酒の入ったジョッキを、グイッと一気に煽り、乾いた喉を潤す。
ティファも止めていた手を再び動かし、目の前の皿に盛られている瑞々しい果物を頬張る。
「・・・それで、その後はどうしたんだい?」
ややあって、アルバートの向かいに座るクリフが尋ねる。
「その後、フェリジアを埋葬して、俺達とラファエルはそこで別れることになったんだ。」
空になったジョッキを振り、クリフに催促しながらアルバートが言った。
クリフは再び新しい麦酒を準備しながら更に尋ねる。
「彼は一体どこへ?」
アルバートは冷えた麦酒を受け取りながら、故郷だ、と答える。
「私達は今回の事件の顛末をハイネの町へと報告しなければならなかったし、ラファエルは一旦ダークエルフの故郷に戻って、借りていた武器を返すって言ってた。」
ティファがアルバートの言葉を引き継ぐ。
皿の果物は半分近くまで減っていた。
その量に呆れつつも、アルバートも手を伸ばして手ごろな果物を一切れつまみ、口へ放り込む。
「それに、行かなければならない所がある、とも言ってたしな。」
指についた果汁を舐め取りながらアルバートが呟く。
そして、何かを思い出したかのように、そうだ、と声を漏らす。
「ラファエルにここの店を教えてあったんだ。一度顔出してくれって。俺達が帰ってくる前に、ダークエルフの男が来なかったかい?」
クリフは顎に手を当て、うーん、と唸りながらここ数日来店した客の中に、該当する人物がいなかったかを思い返す。
「いや、僕は見てないね。ダークエルフであれば一目でわかるし、もしその正体を隠そうとマントとかを羽織っているのなら、それだけで印象はあるからね。ここ数日でそんな人物は、少なくともボクは会ってない。」
そこへ、エルガが簡単なツマミを持ってきてアルバートとティファの前に差し出す。
「エルガ、君はどうだい?」
毎日後片付けもあってか、最後まで店に残るエルガはどうだろうか。
クリフは厨房から出てきた妻に尋ねてみた。
「・・・その、ラファエル、という男か?」
エルガは静かな声で聞き返し、クリフと同じように考え込む。
「・・・その男かどうかはわからないが、一人それらしい人物は来ていたな。」
ティファ、アルバート、クリフの視線がエルガに集まる。
「どんな風貌だった?これくらいの身長でこれくらいの髪で、全身が武器だらけで、えっとセロっていうハイウルフ連れてた??」
やや興奮気味にティファが身振り手振りでラファエルの特徴をオリガに伝えている。
「いや、マントにフードをすっぽり被っていて、顔まではわからなかった。それに、そのときは確か一人だったはずだ。」
ティファの様子に苦笑しながらエルガが答えた。
その答えに肩を落とし、残念そうな表情を浮かべるティファ。
そんなティファにエルガは声をかける。
「でも、二人の話を聞いて、おそらくその人物に間違いないだろうとは思う。」
顔を上げ、きょとんとするティファ。
その手には相変わらず、果物。
「・・・ティファ、その果物美味しいかい?」
突然何の前触れもなくエルガがティファに聞いてくる。
あまりにも突拍子もなかったので、口に含む直前でティファの動きが止まる。
「・・・ふぇ?・・・あ、あぁ、うん。」
間の抜けた返事を返しながら、ティファの顔が若干赤らめる。
「確信はないんだが・・・。」
エルガも、様々な果物のうちの一切れを口に運びながら呟く。
採れたてであろうその果物はとても瑞々しく、口の中で芳醇な甘さが柔らかく広がる。
「この果物はおそらく、ラファエルからのものだと思う。」
意外なエルガの言葉に、思わずその果物を凝視する。
ラファエルが来店して果物を置いていった?
想像することがなかなか難しく、ティファが首を傾けている。
「どういうこった?」
同じくアルバートも繋がりが掴めず、エルガに尋ねた。
エルガは思い出すように、ゆっくりと口を開く。
「・・・昨日の夜のことだったんだが・・・。」
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