話し終えたエルガが、再びティファの前の皿に盛られた果物に視線を落とし、その中から一切れを摘んで口へと運ぶ。
とても新鮮で糖度も申し分ない。
「最初は店で出すか、私達だけで頂こうか迷っていたんだが、やはり二人に食べてもらおうと思ってね。」
ティファとアルバートを見て、優しく微笑む。
エルガの話を聞き終えた二人はどこか驚いたような表情を浮かべるが、それも一瞬のことで、たちまちにとても嬉しそうな表情になった。
「間違いないよ!ラファエルとセロだ!」
興奮気味のティファが思わず声を上げる。
その感情はアルバートも同じなのだが、ティファはそれよりも一際嬉しそうな、まるで少女のような表情を浮かべている。
「あれあれあれ〜?ティファったら、顔赤いよ?ラファエルって人が来たことがそんなに嬉しいのかな〜?」
そこへ、ティファの隣にいたリオーネがくすくすと笑いながら顔を覗き込む。
「えぇっ!??そ、そんなことないよ!」
更に真っ赤になって否定するが、そんな反応がリオーネは楽しくて仕方がない。
「だってほら、新しい仲間ができたんだよ?その仲間が来てくれたんだよ!?嬉しくもなるでしょ?ね!」
あたふたとしながら必死に赤面の言い訳をするティファ。
「もーティファったらかわいい!!」
その様子を見ていたリオーネは突然ティファに抱きついて頬擦りをしながら頭をぐりぐりと撫でる。
リオーネの胸に顔をうずめたティファはもごもごともがきながら頬を膨らませている。
仲の良い二人はまるで姉妹のようにじゃれあっていて、それを他の仲間達は微笑ましく見守っていた。
いつもの光景だ。
暖かく、明るく、ひとつの家族のように、大勢の仲間達は同じ場所に集っていた。
「しかし、アイツが果物狩りしてる姿を想像したら、なんか微笑ましいものがあるな。」
アルバートがその姿を想像したのか、吹き出していた。
「わかってないわねぇ、アル。いい男ってのは、ちょっとした気配り、気遣いをサラッっとしてのけるもんなのよ。」
ティファを撫でる手を止めずにリオーネが、まだまだね、と呟き、溜め息をつきながらアルバートに言葉を投げる。
「まーた始まった・・・。大体お前まだラファエル見たことないだろうが。どうしていい男だって言えるんだよ。」
頬杖をつき、同じく溜め息を返しながらアルバートが呟く。
それに負けじとリオーネも更に言葉を投げ返す。
「そんなの話聞いただけでわかるわよ。少なくとも、アルとは大違いだってこともね!」
「んだと、てめ!」
「あら図星だった??」
そしてここでも、またいつものような光景が繰り広げられる。
アルバートとリオーネは周りのこともお構いなしで、ぎゃんぎゃんと騒いでいる。
仲間達はおろか、店の客達も既に見慣れているのか、さして気に留めるでもなくそれぞれの時間を楽しんでいる。
笑い声と、明るい口喧嘩の声が飛び交う。
ティファは目の前の果物に視線を落とし、いつかラファエルもこの輪の中に、と無意識に思ってしまう。
「・・・彼は、また来てくれるかな?」
騒がしいアルバートとリオーネをよそに、クリフがティファに優しく問いかける。
ティファは視線を上げ、クリフへと移す。
クリフもエルガも、優しく微笑んでいた。
ラファエルは、きっとここへ来てくれる。
そしてみんなに紹介しよう。
新しい仲間だ、と。
ティファは満面の笑みを浮かべ、自信を持って二人に応える。
「きっと来るよ。」
その答えに満足したかのように、釣られてクリフとエルガにも満面の笑みが浮かぶ。
新しい仲間を歓迎しよう。
悲しい過去を背負う彼を、仲間とともに支え、新しい道を歩いていこう。
ティファは一息つくと、外の空気を吸ってくる、と言って席を立つ。
一歩店の外に出ると、酒で火照った頬に心地よい夜風が当たる。
空を見上げると満点の星。
そして真上には、つい先日その姿を見せていたかつての満月が、今ではやや欠けて控えめに輝いている。
初めて彼を会ったときのことを思い返す。
まるで目に映る全てのものが敵であるかのように、荒々しく吹きすさぶ風のようだった。
しかし今は。
森で別れたときの彼は、そよ風のように柔らかく優しく、静かな風を纏っていた。
新しく虹の色に加わってくれた彼は、今どこで何をしているのだろう。
ティファは月を見上げ、共に戦った仲間のことを想っていた。
ひっそりとした街の外れ。
いつにも増して騒がしい酒場から明るい声が漏れる。
今日も、平和な夜が更ける。
そして、アルバートとリオーネの仲の良い口喧嘩は、遅くまで続いていた。
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